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現状では、需要側の保険者・患者の意見、供給側の医師・医療機関の意見をそれぞれ集約し調整する他の方法も、より精度の高いデータも、ともに存在しないので、これらが整備されるまで改めることはできない点に留意する必要があります。
なお、2003年より急性期の入院医療に、2006年より慢性期の入院医療に、それぞれ包括評価が導入され、透明度は高まりました。
改定のプロセスは不透明ですが、当事者である厚生労働省の保険局は医療費の抑制を、日本医師会は供給者間のバランスの維持を重視し、そのために各「診療行為」の点数を、双方の政策目標を達成できるように改定してきました。
具体的には、ある「診療行為」の回数が不適切に増えたと双方が判断した場合には、厚生労働省は医療費抑制の見地から、日本医師会は当該行為を多く実施している医療機関や診療科が突出して利益を受けているという見地から、点数を引き下げます。
このような政策目標に沿って点数が改定されるため、出来高払いでありながら、必ずしも医療費は大きく増えていません。
本来ならば診療報酬によって統制できるのは、「価格」の面だけで、「量(回数)」はできません。
「価格」を統制すると、医師.医療機関は収入を確保するため量(回数)を増やすはずです。
ところが、まず回数が増えた分だけ「価格」を下げれば、相殺されます。
CTスキャン、MRIの点数改定の動きを示しており、2002年の改定でMRIの点数が3割、☆マルチスライスの場合は850点、☆☆1.5テスラ以上の場合は1,230点08年度点数は06年度と同じだが、☆☆は1300点に下がっています。
その後、2006年に新しいものに-ついては若干上がりましたが、画像精度の低い古い機種に対する点数はさらに下がりました。
また、点数を引き下げることのほかに、請求するうえでの条件を厳しくする(たとえば、CTスキャンの読影については何回行っても月に1回しか請求を認めない)ことによっても対応しています。
一方、バランスの維持は、過去の実績に基づいて、双方の交渉で次年度の配分を決める医療政策の基本に則しています。
その結果、もともとシェアの大きかった診療行為や、それを主に担ってきた診療科と医療機関が相対的に有利になります。
具体的には、開業医の担うプライマリーケアの割合が高い状態から出発したので、大病院の高度医療よりも優遇されることになり、それが医療費の抑制にも貢献しています。
以上の医療費の抑制とバランスの維持だけではなく、当面の政策目標を達成するためにも点数が改定されます。
たとえば、2006年度の改定において、全体としては3.16%下がりましたが、産科・小児科領域の点数は引き上げられました。
つまり、診療報酬は医師・医療機関に対して、医療費の抑制とバランスの維持という「ムチ」だけではなく、あるべき方向に向かわせるための「アメ」の役割も果たしています。
薬の公定価格である薬価は、診療報酬改定の際に次のようにして引き下げられてきました。
まず診療報酬を改定する前の年に、各薬剤の市場での取引価格、つまり各医療機関が卸よりいくらで買っているかを調べる「薬価調査」が実施されます。
各メーカーは販売促進のために、通常値引きして医療機関に納めているので、ほとんどの場合、取引価格は薬価よりも低いという調査結果が出ます。
これが各薬剤についての「薬価差」となります。
次に、こうした薬価差を縮小するため、薬価の引き下げが行われます。
引き下げの程度は、各薬剤の薬価差が許容限度幅(リーズナブルゾーンと呼んでいます)を超えた低い価格(銘柄ごとに販売価格に販売量を乗じて加重平均された価格)で取引されていることが判明した場合には、超えた分だけ行われます。
Rゾーンの幅は1992年の15%から順次縮小され、2000年には当初同年の目標とされていた割合の5分の1の2%になりました。
その結果、たとえば1錠100円の薬価がついている薬剤の市場価格が90円であることが調査で明らかになれば、新しい薬価は92円になります。
2%のマージンでは保管などに要する通常の流通コストを下回っている可能性があり、それが医薬分業を促進する原動力となって、2005年には調剤薬局で調剤される処方菱の割合が、院内処方をついに上回りました。
しかしながら、それでも診療報酬の改正後、取引価格は低下するので、かつてほどではありませんが、2005年における薬価差は約8.0%であることが中医協に報告されていました。
さて、薬価差以外にも、薬価には3つ問題があります。
その第1は、いくら薬価を下げても、当初設定された薬価が欧米と比べて高すぎる、という批判です。
その原因は、日本では新薬の承認のプロセスがこれまで比較的甘く、同じような薬効であっても新薬として認められ、しかも比較的高い薬価がつけられたことにありました。
しかし、現在では新薬としての承認基準と薬価のつけ方が厳しくなったので、むしろアメリカにおける高い価格に引きずられて高い薬価がつけられる傾向があります。
第2は、日本は先発薬の薬価が高く、また使用割合が高いことです。
先発薬(ブランド)とは当該薬剤を最初に開発した会社の製品で、これに対して後発薬(ジェネリック)とは先発薬の特許の期限が切れた後に市場に出た製品です。
諸外国では先発薬の特許が切れると後発薬が参入して価格は急速に下がりますが、日本ではあまり下がりませんし、後発薬のシェアは1割程度にすぎません。
2006年の診療報酬の改定では、後発品の促進する経済誘導が強化され、浸透度は高まりつつありますが、欧米と比べていまだに低く、2005年の外来における後発品の割合は8%に留まっています。
第3は、出来高払いで費用が補償されている限り、たとえ医療機関は薬価差による利潤がなくても、費用を無視して薬剤が処方されることです。
それが医師の新薬志向、先発薬志向の大きな理由と考えられます。
この問題を解決するためには、薬剤の費用を診察料や入院料に包括させる必要があります。
なお、薬価は薬価調査の結果だけではなく、「再算定」に薬は国際市場で流通していますので、本来は統一的な価格で取引され、薬による生活の質(QOL)の改善を経済学的な観点から評価して決めるべきでしょう。
しかし、各国の産業政策や医療制度によって、価格に差があります。特定の薬の価格を比べることはできても、全体としての薬の価格を国際比較するのは困難なことですその理由は、第1に国によって処方される薬の種類や構成比が違い、特に日本では他の国で市販きれていない薬の構成比が高いので全体として薬価が高いか、低いかの結論を出すことは難しいのです。
日本の通常処方量は諸外国と比べて一般に少ないので価格は相対的に低くなります。
ところが、1回に処方される薬の種類は逆に多いので、たとえ1剤の1日当たりの価格としては低くても、薬剤費全体としては高くなるかもしれません。
よって新薬の売り上げがメーカーの提示した予測以上であった場合、また適用範囲が広がった場合にはそれぞれ引き下げられ、さらに長い間使用されている場合(長期収載薬)も下げられます。
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